ランニング禁止令の元凶であるT君。
彼は、風貌がサラリーマンというよりは、
工事現場が似合う感じだった。
その上、無口で無愛想。
仕事も独り。
というか、何やってんのか上司でさえも
なかなか聞き出せない程のだんまり屋だった。(←オイオイ ^^;;)
T君は寮に住んでいた。
でも、彼の部屋は、日がよく当たらなかった。
窓の方角のせいではない。
T君が、自分で窓という窓に、紙を貼り付けて
外から中が見えないようにしたせいだった。
カーテンをつければ良さそうに思うのだが、
T君には、そんな発想がなかったらしい。
T君は、人とかかわるのを避け、
まるでサナギの中に丸まってじっとうずくまっている
かのように、自分の世界に入り込んでいった。
もう、誰も、彼に近寄れなかった。
そんなある日。
彼の元に1本の電話があった。
父親が倒れたのだった。
幸い、一命は取り留めたものの、
父親の体を案じてか、T君は家の商売を継ぐ
決心をした。
そして、かろうじて直属の上司にだけ事情を話し、
ある日突然、職場から姿を消した。
その後には、嵐の後のような静けさと、彼の仕事の
後始末だけが残された。
彼が去ったと聞いて、皆は口々に言った。
『T君の実家って・・・客商売なんじゃ・・・?!』
その言葉の陰には、
【T君にできるの???】
という、深ーーい疑問が隠されていた。